「いいアイアン」ってなんだろう? クラブ設計家に聞いてみた!

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ロフト25度の飛び系7番アイアンもあれば、同じ7番でもロフト35度のモデルもあることからも分かる通り、現代のアイアン選びは複雑だ。「番手」がただの記号と化し、飛び性能がウリのモデルが人気を集めるなかで、我々はなにを基準にアイアンを選べばいいのか? 「いいアイアンってなんだろう?」という素朴な疑問を、クラブデザイナー・松吉宗之にブツけてみた。

「ジューシー」の設計家・松吉宗之にいいアイアンの条件を聞いた

「アイアンが飛距離だけを重視するクラブであれば、ドライバーに『7番アイアン』って書けばよくなってしまいますよね。そうすれば250ヤード飛ぶ7番アイアンとして売ることができます。でも、アイアンの目的はそこにはありません。遠くに飛ばすドライバー、カップに入れるパター。その間のクラブは、基本的に『狙ったところに行く』ということを前提に開発しなくてはいけないのです」

いいアイアンとはなにか? そう尋ねると、松吉は設計家の立場からこう答えてくれた。松吉は有名メーカーで長く設計家としてのキャリアを歩み、4年前に独立して自身のブランド「ジューシー」を立ち上げた人物だ。

「ジューシー」を手がけるクラブ設計家・松吉宗之に話を聞いた

では、松吉の言う「狙ったところに行く」アイアンとは、いったいどのようなアイアンなのだろうか? 松吉によれば、大切なのは番手ごとにどのような重心設計がされているかだという。

5番は上がり、9番は上がりすぎない。いいアイアンに大切な重心のこと

「たとえば9番アイアン。ゴルフ歴の長い方なら、重心が深いとボールが上がりやすいとか、重心が低いとスピン量を減らしやすいといったことがわかると思いますが、そのうえで9番にはどんな重心設計がふさわしいか考えてもらえるといいと思います。9番に球を上げる機能や、スピンを減らして飛ばす機能は必要ないですよね。深く、低い重心はロング番手には有効ですが、ショート番手には必要ではないんです」(松吉、以下同)

ロング番手には球を「上げる」性能が求められるが、必ずしも同じ性能がショート番手にも求められるわけではない

一般に、重心が深いとボールを上げやすくなり、重心が低いと重心の上にボールが当たることでスピンを減らしやすくなる。飛ばすためのアイアンは、打ち出し角、スピン量、ボール初速の“飛ばしの3要素”を揃えるために、中空構造にしたり、キャビティを深くすることで深く低い重心設定にするケースが多いが、松吉はそのしわ寄せが8番や9番といったショート番手に出てきてしまうと指摘する。

「たとえば、しっかり振るとボールが上がりすぎてしまう。それを防ぐために、上から潰し気味に入れてスピン量を相殺するといったように、技術でなんとかする必要が生じたりします」

気持ちよく振り切って良い結果が出る。それもいいアイアンの条件だと松吉は言う

つまり、6番や7番で気持ちよく飛ばせるアイアンは、9番やPWをグリーン上で止めるのが逆に難しくなる可能性があるというわけだ。球が上がり過ぎればそれは風に対する弱さや左へのミスにつながり、スピンが減りすぎては飛びすぎなどの弊害ももたらしかねない。飛ばすのが“やさしい”クラブは、ショート番手においてはコントロールが難しいクラブにもなりえるのだ。

いいアイアンについて考える上では「ショート番手」がカギを握る

一方で、コースでは5〜7番アイアンよりも8〜PWのショート番手のほうが登場頻度はむしろ高く、スコアメークにも密接に関わってくるケースは多い。残り165ヤードからは乗らなくても仕方がないが、残り125ヤードからはできればオンしたいものだ。

ゆえに、「いいアイアン」を考える際は、ショート番手を基準にするのがひとつの手だと松吉は言うわけだ。

8番より下の「ショート番手」がいいアイアンを考える上では重要だ

「アイアンには『3つのやさしさ』があります。ひとつめは『上がりやすさ』です。初心者の方などにはもっと大切な性能ですね。ふたつめは『ミスヒットへの強さ』で、これは左右慣性モーメントと呼ばれる値が大きいほどミスに強くなります。そして最後、みっつめは『フェースコントロールのしやすさ』です。ショート番手の場合、ロフトが寝ているので『上がりやすさ』は必要ありません。慣性モーメントは重さと距離の自乗で求められるため、ヘッドが重いショート番手は自ずと慣性モーメントが高くなるので、これも無理に高める必要がない。そのため、重心が浅めのヘッド形状のほうがコントロールもしやすく、『やさしい』ということになるのです」

仮にドライバーのような460CCヘッドでロフトが9番アイアンと同じ42度あるクラブがあるとしよう。考えるまでもなく使いにくいはずだ。ドライバーに求められる深くて低い重心、大きな慣性モーメントや飛距離性能は9番アイアンには必要ない。

アイアンのショート番手は、むしろコンパクトで重心も浅めなほうが扱いやすいのだ。「慣性モーメントが大きくてミスヒットに強いサンドウェッジがほしい! って誰も言わないですよね。小さいことがやさしさにつながるケースもあるんです」と松吉は言う。

いい番手の性能は「30度」が分かれ道

「一方で、5番アイアンのようなロング番手はロフトが立っている分上がりにくく、曲がりやすい。そのため、3つのやさしさのうち、ひとつめの上がりやすさと2つめのミスヒットへの強さが求められます。そして、そのためにはある程度深くて低い重心が必要になってきます」

ショート番手が浅めの重心が良いからといって、ロング番手まで同じ重心で良いわけではなく、それだとロング番手が難しくなりすぎてしまう。つまり、「いいアイアン」に求められる重心設計は番手によって異なるということだ。ロング番手は低くて深い重心設計、ショート番手は浅めの重心設計とし、その上で各番手が性能的にも見た目的にも違和感なくフローしている。それが松吉の考える“いいアイアン”ということになる。

ロフト30度を境目に、重心設計はゆるやかに変化していくのが理想

「ロフト30度くらいを境目にして、重心設計でボールを上げる必要がなくなってきます。ゆえに、30度よりロフトが寝る8番、9番、ピッチングは重心を浅く、30度より立っている5番や6番は重心を深くしなくちゃいけません。だいたい7番がちょうどその中間となるでしょうか。そのような分け方が大切だと考えます」

ロング番手は上がりやすく。ショート番手は止めやすく。そのための重心設計がされているのが松吉の考える「いいアイアン」ということだ。

いいアイアンの定義は人それぞれ。飛びか、スコアメークか

ただもちろん、このように設計されたアイアンは、6番アイアンや7番アイアンが通常のクラブより突出して飛ぶということにはならないから、それをデメリットと感じる人は少なくない数いるはずだ。飛ぶように設計されたアイアンと、飛ぶように設計されているわけではないアイアン、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらを取るかは自分のゴルフスタイルに合わせて選べばいいのだ。

もちろん「飛ばせるアイアン」が悪いわけではない。ゴルフスタイル、求めるものに合わせて選べばいい

いいアイアンの考えは人それぞれ違っていい。選択肢は多ければ多いほうが健全だ。しかし、松吉のいう「ロング番手は上がりやすく、ショート番手は止めやすい、打ちやすいアイアン」という答えもひとつの説得力のある答え。

「いいアイアン」を求める人は、覚えておいて損のない考え方ではないだろうか。

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松吉が長く勤めたクラブメーカーを退社し、自身のブランド「ジューシー」を立ち上げたのは2018年のこと。設立から4年、ついに初のアイアンがリリースされた。その名も「tQアイアン」。ロング番手は上がりやすく、ショート番手は止めやすい重心設計、機械加工による超精密な製造、所有欲を満たすシャープな仕上がりは唯一無二。気になる方は、ぜひ下記の各店舗ページをチェックしていただきたい。

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