竹林隆光は1980年代、クラブの変革が始まろうとしていた時期にクラブ設計家としてデビュー。「ヘッドの重心位置こそがクラブの性能を決める最大の要因」という考え方をベースにした設計理論に基づいて多くの話題作、ヒット作を生み出した。
同時に、彼が「フィーリングを数値化」したことによってクラブの評価基準も格段に精度が高まり、進化を促した。従来の常識や伝統にとらわれず、科学や力学をも導入し、あらゆる面からフィーリングを数値化することで重心位置をデザイン。クラブのパフォーマンスを高めた設計理論はやがて世界基準となり、その後に生まれた多くのクラブのベースには、多かれ少なかれ“竹林流”の設計理論が流れている。
亡くなってすでに10年以上になるが、クラブ設計家としての竹林隆光が歩んだ航跡と、その過程で築き上げた功績を振り返り確認してみることは、クラブのさらなる進化の方向を探るうえで、またスコアアップを目指す多くのゴルファーにとって、彼が遺してくれた遺産がいかに大きいかをあらためて知らされる機会になるに違いない。
(「はじめに」より)