平日は仕事で忙しく練習場に足を運べず、練習時間がなかなか取れないとお悩みのアマチュアゴルファーは少なくない。「わずかな時間でゴルフを上達したい!」と願うゴルファーにおすすめしたいのが「自宅練習」。自宅でゴルフ練習することは可能なのか?室内で出来る練習法とは何か?解説していこう。
自宅でゴルフの練習は可能?
ゴルフの上達に必要なものはなんでしょうか? ゴルフ雑誌を見たり、ゴルフのYouTubeを見たりと色々思い浮かぶことはありますが、正直なところ本当に上手くなるためには練習するしかありません。
しかし、アマチュアゴルファーの多くは仕事をこなしながら、わずかな時間で練習時間を捻出しなければなりません。そうなると、たとえば自宅の近所にゴルフの練習場がない場合、なかなか練習時間が確保できません。仕事で疲れた後は、練習場まで行くのも面倒に感じられるものでもあります。
都市部に在住しているゴルファーの場合、練習費用の問題もあります。都市部では200球も打てば施設代・ボール代が吹っ飛んでしまいますし、それを高頻度でこなせばお小遣いが心配です。練習にお金がかかって、肝心のゴルフ代が捻出できない……となったら本末転倒もいいところ。
でも、上手くはなりたい! そう願うならば、自宅で練習するという選択肢があります。
もちろん、自宅では(基本的には)ボールを打って、その行方を見定めるような練習はできません。しかし、だからこそ効果的に練習ができるということも言えるのです。
では、どのような練習が効果的なのか? 目的別・クラブ別に見ていきましょう。
自宅でできるおすすめの練習法:パター編
自宅でできる練習として、もっともポピュラーなのがパターマットを使ったパット練習ではないでしょうか。パターマットを敷くスペースだけあれば家中どこでもいつでも可能。騒音も少なく、とくにパターの練習時間が絶対的に不足しがちなアマチュアゴルファーにとっては非常に効果的な練習になります。
ただ、問題はどうしても単調になってしまうこと。そのため、たとえば1メートルを100回連続で決めないと練習を“やめられない”などと縛りを設け、プレッシャーを自分にかけてより本番に近い心理状況で練習を行うなどの工夫を、上手い人はしているケースが多くあります。
また、パターマットの場合は真っすぐ強めに打てば入ってしまうことも多々。実際のグリーン上では完全に真っすぐのラインはなかなかありませんし、距離感を無視して強く打って入れにいくシーンもほぼありません。なので、最後のひと転がりでコロンと入るタッチで打つなど、工夫してみるのもいい方法です。
また、パターマットだけでなく練習器具を組み合わせるのも良い方法です。
レーザーパット
たとえば「レーザーパット」は方向性と距離感をレーザーで可視化してくれる優れものの練習器具。器具から照射される緑色のレーザーが、アドレスやストロークの無キアがあっているかや、打点のバラつきなどを可視化。正しい方向に、正しくヒットできているかを教えてくれます。

方向性と距離感をレーザーで可視化する練習器具「レーザーパット」
パターの先に振り幅の目安となる赤い点をレーザーで照射することで、常に一定の振り幅でストロークすることも可能になります。この器具を用いることで、ストロークの軌道や振り幅などははるかに効率良く整えることが可能になります。

パッティスト2
また、「パッティスト2」は自宅に居ながらにしてパッティングの距離感を身につけることが可能になる練習器具。打った球をパッティストに当てることで、実際のグリーンだったらどれくらい転がったかを表示してくれるという仕組みです。

自宅にいながらにしてパッティングの距離感を身につけられる練習器具「PuttistⅡ(パッティストⅡ)」
たとえば入れごろ外しごろと言われる2メートルを徹底的に磨くといった使い方が非常に効果的。自分の中に2メートルの物差しがあれば、それより強めで3メートル、弱めで1メートルといったように調整が容易になるからです。
打ったボールが狙いよりも左右にズレたか否かも教えてくれる、シンプルながら効果的な練習器具です。
他にも、ストローク自体を矯正する練習器具や、小さいヘッドで集中力を高める練習器具など、パターの練習器具はバリエーションが非常に豊か。これらを取り入れることで、自宅での練習効率は飛躍的にアップするのです。

自宅でできるおすすめの練習法:アプローチ編
自宅練習で試したいもののひとつに、アプローチ練習があります。
アプローチのテクニックはスコアに直結するゴルフの超重要要素。ですが、アマチュアゴルファーの多くはアプローチの練習時間が圧倒的に足りていません。
アプローチ練習に効果的なのはコースのアプローチ練習場ですが、アプローチ練習場があるコースはそもそもそう多くなく、あってもついついショットやパター練習に時間を割きがち。
じゃあいわゆる打ちっぱなし練習場で練習すればいいのではなとなりますが、練習場ではこれまたついついアイアンやドライバーの練習に時間と球数が割かれ、アプローチは練習の最初と最後におまけ程度に5球ずつ、みたいなパターンに陥りがちです。
ですので、周囲の安全に最大限配慮した上で、という注釈はつくものの、自宅でのアプローチ練習は効果的です。

アプローチ上達するためには自宅でどんな練習ができる?
試したいのが、パターマットでのアプローチ練習です。パターと同じようにほんの小さなストロークでカップめがけて打っていけば、フェースにボールを乗せる感覚が自然と磨かれていきますし、出球の方向も安定します。
アプローチ専用のネットなども市販されていますから、そのようなものを使用するのも一つの方法。ごく小さな距離のアプローチであれば、座布団やクッションに向けてアプローチするという方法もあります(ただし、意図せぬシャンクやトップなどで事故が起きないように注意しましょう)。
ウェッジトラック
このときウェッジのダフリ・トップ・シャンクをなくす練習器具「ウェッジトラック」のような練習器具を使うのは非常に効果的な方法です。

ダフリ、トップ、シャンクがなくなる練習器具「ウェッジトラック」
ウェッジトラックは、その上でにクラブヘッドを置いてガイドに沿ってなぞるように打つことで、アプローチの理想とされる「ロー&ロー軌道」が自然に身につくという練習器具。平面ではなく、三次元構造となっているため、ヘッドの入射角も整えることができます。
ウェッジは、ほんのわずかな軌道のズレがザックリやトップ、シャンクといった致命的なミスにつながります。だからこそ、このような基礎練習が大きな効果を発揮するのです。

自宅でできるおすすめの練習法:素振り編
自宅でできる練習法として優れているもののひとつに「素振り」が挙げられます。ボールを打たない地味の代名詞のような練習ですが、これがアマチュアには意外なほど効果的なんです。
なぜ素振りが効果的なのか。理由は非常に簡単で、ボールを打たないから。ゴルフはクラブでボールを打って飛ばすゲームなのだが、打たなければ練習にならないと感じるかもしれませんが、実は一概にそうは言えないのです。

練習場では球を打つ練習をしがちだが、家では素振り練習が効果的だ
ボールを打ってしまうと、どうしても「結果」が気になります。飛ばないなと感じれば力んで飛ばそうとしてしまいますし、上手く当たらないと感じれば当てようとしてしまいます。つまり、結果が見えてしまうことで、力みや当てに行く動き=手打ちなどを誘発してしまう可能性があるのです。
飛んでいくボールに気をとらわれずにスウィングを磨くことだけに集中できる。そのため、素振りは非常に良い練習になるのです。
素振りの注意点
素振りを行うときに気をつけるべきことですが、まず大前提として周囲の安全です。庭やガレージで行うにせよ、短いクラブや練習器具を用いて室内で行うにせよ、天井や壁、家具などにクラブや練習器具が当たらないように万全の注意を払いましょう。もちろん、周りの人の安全にも最大級の配慮が必要です。
その上で、技術的なチェックポイントはテーマを決めることです。ただ漫然と素振りをしていてもただのストレッチ以上の効果はありませんが、たとえば「カット軌道を直す」「フェースを開かないようにする」「ヘッドアップをしない」といったテーマを決め、そこに意識をフォーカスして素振りをすることが大切です。

自宅で練習する際はチェックポイントを意識しながら素振りすることがポイント
バックスウィングでフェースが開きすぎたり、オーバースウィングになる人であればクロスハンドで素振りをしてみたり、逆にフェースローテーションが上手くできずにボールをつかまえられない人はスプリットハンドで素振りをするといったアレンジもいい方法。古き良き「わきにタオルを挟む」方法も、ボディターンの感覚を身につけるのにぴったりです。
自分の課題を設定し、それを克服できるような方法で素振りを行い、それを習慣化すれば、いつしか課題は克服できているものです。
素振り用練習器具を使ってみよう
とはいえ、どんなふうにテーマ設定をすればいいのか、テーマに沿ってどのような素振りの方法を選択すればいいのかがそもそもわからないというケースは多いはず。
そんなときにおすすめなのが、「素振り棒」とも呼ばれる素振り用の練習器具です。
ウィップモンスターバット
ウィップモンスターバットは飛ばしに必須の「しなり」を覚えられる素振り用バットです。長さは41.5インチで、重さは600グラム。そして、その名の通りウィップ=ムチのように大きくしなるのが特徴。

ありそうでなかった”しなり”が特徴の素振りバット「ウィップモンスター」
切り返しで大きくしなることで、自然に間を感じることができ、ダウンスウィングで遅れてきたクラブヘッドがインパクト前後で一気に“走る”感覚を身につけることができます。
切り返しでの間の作り方、クラブが走る感覚、シャフトのしなりの感じ方など、スウィングを一段階レベルアップさせてくれる効果が1本で得られる、効果的な素振り用練習器具です。

ライビースイングベンド
ライビースイングベンドはシャフト部分がググッと曲がった(ベンドした)形状が特徴の素振り用練習器具。
シャフト部分が湾曲した形状であるため、バックスウィングで“倒れる”ような動きをするという特徴があります。ゴルフクラブも、シャフトの軸線上からヘッドの重心点が離れているため、同じように倒れる(=フェースが開く)方向に動きます。

素振りをするだけでローテーションが自然と身につく「ライビースイングベント」
ライビースイングベンドは、シャフト部分を湾曲させることで、実際のゴルフクラブと同じような振り心地を実現させているのです。
この形状のメリットは、正しいフェースローテーションを身につけられるという点にあります。バックスウィングで倒れようとしたフェースが、ダウンからインパクトにかけては反対側にターンする。その感覚を刷り込むように素振りを繰り返すことで、ボールをつかまえるために必須なフェースローテーションを身につけられるというわけです。
打ったボールがスライスする理由はスウィング軌道に対してフェースが開いているから。スライスに悩んでいる人は、使ってみる価値のある素振り棒です。

レーヴ スウィングスティック
シャフトの先端に「おもり」が刺さったような形状が特徴の素振り用練習器具、それがレーヴ スウィングスティックです。この素振り棒の効果は、ズバリ、ヘッドスピードアップ。

シャフトメーカーが本気でつくった練習器具
長さはドライバーとほぼ同じ45インチ。先端に取り付けられたおもりの重さもドライバーとほぼ同じの200グラム。つまり、ドライバーに非常に近いスペックになっています。

先端にはドライバーとほぼ同じ200グラムのおもりがついている
シャフトメーカー・レーヴが作る器具だけに、シャフトはしっかりとしなりを感じられる本格的なもの。使い方は簡単で、ドライバー同様に素振りを繰り返すだけ。ヘッドに重さがあることで自然とスウィングアークが大きくなり、しなりを感じやすいシャフトが装着されていることから、切り返しのタイミングも覚えられます。
ひたすら振り込むことで飛距離アップを目指したい。そう思う方にぴったりの素振り用練習器具です。

自分に合う素振り棒を選ぼう
このように、一言で素振り用練習器具といっても「しなりを覚える」「フェースターンを覚える」「ヘッドスピードを上げる」といったように目的・効果はさまざま。
それだけに、自分に合ったものを選んであげれば、下手にボールを打つよりもずっと効率的にスウィングを磨き上げることが可能になるのです。
自宅でできるおすすめの練習法:ショット編
一定のハードルの高さはあるものの、自宅でみっちり練習したいという方には自宅を練習場化した上でのショット練習という選択肢もあります。
最も一般的なのは使用していないガレージや屋上スペース、庭などにいわゆる「ゴルフ練習ネット」と呼ばれるキットを設置し、足元にはショット用マットを敷いて自宅を“鳥かご練習場”化するというもの。
費用としては、だいたい数万円から本格的なもので10数万円といったところ。ネット自体をDIYするということも不可能ではなさそうですが、手間と安全性を考えれば専用のものを購入するほうがベターです。
練習ネットを設置するメリットは、なんといっても自宅に居ながらにしてショット練習を行えるという点にあります。鳥かご練習の場合、飛んでいくボールを見ることはできませんが、素振り同様にその分だけスウィングに集中できるというメリットが生まれます。
また、ドライバーであればショットマーカーをフェース面に貼って打点を確認するというのも効果的。ティアップしたボールをウェッジで打つ練習は、スウィング軌道を安定させてダフリ・トップを防ぐのに効果的です。
また、鳥かご環境だからこそ、練習器具を使用してドリル練習に打ち込みやすいのもメリットです。
例えば岩井明愛プロ&千怜プロを育てて2024年ゴルフダイジェスト レッスン・オブ・ザ・イヤーに輝いた永井哲二コーチが考案したダブルグリップアイアンなどはそのうちのひとつ。

胸の前の三角形を保つコツがつかめる練習器具」「ダブルグリップアイアン」
これは、ゴルフクラブをアドレスしたときにできる両肩と両腕で作る「三角形」を崩さないようにスウィングするための練習器具。それによりスウィングの再現性が高くなり、パターからドライバーに至るまで、精度が高くなるのです。
正しいスウィングが覚えられるだけでなく、持ち方次第でスライスを防いだり、フックを防ぐことも可能。こういった練習器具を使ったドリル練習には、いわゆるマン振りで球を打つような爽快感はありません。しかし、自宅だからこそ、こういった器具を使った“本当に上手くなるための練習”に取り組むことができるのです。

自宅でできるおすすめの練習法:物件編
ちなみに、ご自宅に十分な天井高がある地下室などがある場合、そこをスタジオ化することも可能です。世界の富豪の中には、この自宅練習スタジオに“雨の日”を再現する降雨設備まで設置している例もあるとかないとか……。
そこまでいかなくとも、トラックマンなどの弾道計測器や、ゴルフシミュレーター、動作解析機などを導入すれば、プロ顔負けの練習環境を手にすることが可能です。
一時期、新規に建設されたマンションの共用部にゴルフのインドア施設を併設することがニュースにもなりました。これから引越しや住宅の購入を検討している方は、インドアゴルフ設備が併設されている物件を探すという手もないとは言えないかもしれません。
と、最後はやや夢物語感が強まってしまいましたが、見てきたように自宅でゴルフの練習をすることは十分に可能ですし、効果も高いことはご理解いただけたのではないでしょうか。
隙間時間で上手くなれるのがゴルフの自宅練習の良いところ。明日のベストスコア更新のために、今日からコツコツ自宅練習、はじめてみませんか?