460cc以外の選択肢として最近話題の小ぶりヘッドドライバー。なかでも最新モデルのなかでもひときわ小さいのがローズゴルフクラブのMOE86 300。では、ヘッド体積が同じでもその中身はどう進化しているのだろうか? 最新の300ccと20年前の300ccを打ち比べてみた。
「300ccドライバー」は進化しているのか?
300ccドライバー「ローズゴルフクラブ MOE86 300」が、ゴルフダイジェストの通販サイト・ゴルフポケットでよく売れています。
300ccと、最近のスタンダードとなっている460ccよりも一回り以上小さなヘッド。しかも長さは44インチ。ロフトは13度と、かなり尖ったスペックとなっています。

ローズゴルフクラブ「MOE860 300」
プロが行った試打検証でも、十分な飛距離とヘッドの扱いやすさで非常に高く評価されていましたし、私(ゴルフポケットの商品企画担当・O)も100球立て続けに打ちましたが、とくに球筋が安定したことにビックリしました。
その試打があまりにも印象的だったので、新たな企画を実施することにしました。ズバリ、「最新の300ccドライバー」であるMOE86 300と、「20数年前の300ccドライバー」の打ち比べです。
もちろん、最新モデルであるMOE86 300のほうが飛ぶし曲がらないことは打つ前からわかっています。ですが、新旧でクラブのどこがどう変化あるいは進化しているのか? そこを知りたいという趣旨です。
というわけで、ネットオークションで四半世紀近く前にリリースされた300ccの名器ドライバーを落札 (スペックは9.5度、Sシャフト)し、さっそく50球ずつ打ち比べてみました。
300ccドライバーは「高打ち出し・低スピン」に進化していた
50球ずつ打ってみると、やはりその性能差は明らか。20年前は高反発ドライバー華やかなりし頃で、フェースの反発性能は昔の300ccのほうが高い可能性がありますが、飛距離はMOE86 300のほうが断然、上です。
それはなぜでしょうか?
まずはフェース面の反発だけに頼らないヘッド性能の進化が挙げられると思います。具体的には、球の高さとスピン量が違います。昔の300ccが球が低く、スピン量が多い(つまり吹け上がりやすい)のに対し、今の300ccは打ち出し角が高く、スピン量が少ない。それが飛距離に直結しています。

最新300ccは、昔に比べてスピンが少なく、打ち出し角が高い
これには、ヘッド素材の進化や製造技術の改善など多くの理由があると思います。その上で、MOE86 300の13度ロフトの影響も大きいと思います。ロフトで球を上げ、ヘッドの低スピン性能で前へ運ぶという合理的な役割分担です。
余談ですが、「ロフト13度」という“数字”に違和感を覚えるゴルファーは多くいるのは事実だと思います。ただ、ヘッドスピードが42m/s前後の平均的なゴルファーである私が打ったとき、今回の2本でいえば9.5度より13度のほうが飛ばせたのは事実。数字ではなく、弾道でロフトは選ぶ時代だなあと改めて感じました。
シャフトも大幅に進化している
さて、今と昔の300cc比較のなかで、もうひとつ進化を感じたのがシャフトです。昔のものはしなりをイマイチ感じられません。やや大げさにいえば、鉄パイプを振っている感覚。グリップとヘッドをつなぐ棒、という印象を受けました。
それに対して、MOE86 300に装着されているシャフトは、振動数といった定量的な数字では非常に硬めなのですが、いざ振ってみるとスウィングに呼応してしなやかにしなってくれる印象があります。

ヘッドの進化とシャフトの進化があいまって、飛距離アップにつながっています
始動したら次の瞬間にはフィニッシュになっているような、軽快な振り抜きの良さ。この弾性感、強靭さはここ20数年のシャフトの進化以外のなにものでもないと感じました。
平均の飛距離差はざっくりと20ヤードほどでしょうか。年月に換算すればドライバーは毎年1ヤードくらいずつ飛距離が伸びているのかもしれないなと思いました。(100年後には、ゴルファーみんな300ヤードヒッターになっているかも……!?)
「小ぶりヘッド」自体にメリットがある
そして300ccというヘッドサイズに共通した良さもわかりました。それは、小ぶりヘッドならではの振り抜きやすさや、ヘッドの感じやすさです。
460ccに比べ、クラブとしての扱いやすさはサイズが小さいほうが上。おそらくはそのことが理由で、新旧ともに球のバラ付きがことのほか少ないという共通点がありました。小ぶりヘッドの良さは、昔も今も変わらないのかもしれません。
もちろん大型ヘッドがダメというわけではありません。ただ、大型ヘッドの苦手な方にとって、小ぶりヘッドは救世主になり得ます。
そして、その背景には最新小ぶりヘッドの進化も大きな理由としてあることがわかった、今回の300cc新旧試打でした。
