「素振り棒」をご存知でしょうか。その名の通り、ゴルフスウィングを改善する目的で使われる、素振り用の棒状練習器具のこと。この記事では、飛距離アップや筋力アップ、スウィング矯正など様々な効果のある素振り棒を、まとめてご紹介します!
素振り棒の歴史
ゴルフショップに行くと、数多くの種類の練習器具が売られており、中でも“素振り棒”は目を惹く存在のひとつですよね。その歴史をひもとくと、古くは「竹ほうき」に行き着きます。
今でも道路に溜まった落ち葉などを集めるのに使われる竹ほうきですが、一定の長さがあり、重量があり、ゴルフクラブのヘッドにあたる先端部分にその重さが集まっていることから、体幹で振る感覚を身につけたり、ヘッドを効かせる感覚を養うのに良いとされてきました。
ベテランプロが「竹ぼうき素振り」を推奨する人ケースは多く、月刊ゴルフダイジェストがゴルフの素振り用竹ぼうきを企画したところ、まさかのスマッシュヒットを記録した、ということもありました。
次に登場したのは野球の「バット」です。竹ぼうきほどの長さはありませんが、やはり先端に行くほど重くなる形状で、全体に重量があり、なおかつ携帯しやすいことからキャディバッグに忍ばせるゴルファーも少なくなく、ラウンド前のウォーミングアップにも利用されました。
野球のバットにゴルフのグリップが装着されたゴルフ用バットは、今も定番の素振り用練習器具として多くのゴルファーのキャディバッグに入れられています。
素振り棒には非常に多くの種類がありますが、「竹ほうき」と「バット」がそのオリジンであることには異論がないはずです。
なぜ素振り棒は流行るのか?
ゴルフの練習は「球を打つ練習」と「素振り」に大きく分かれますが、ボールを打つ練習は実戦的である反面、どうしても飛んでいくボールが気になってしまい、つい力んでしまいがちである点、基本的には練習場まで足を運ばないとそもそも練習ができない点など、デメリットもあります。
その点、素振りは場所も選びませんし、ボールを打たないで結果を気にすることもありません。そのため、スウィング作りに集中できるというメリットがあるのです。

練習場ではついついボールを沢山打ってしまいがちだが、素振りは上達する上で有効な練習法
コーチやプロはよく「素振りのスウィングはいい感じなので、そのイメージのまま振ってみてください」といったアドバイスをアマチュアにします。実際に球を打たない素振りでは、当然ながら当てに行く動きや、インパクトに合わせるような動きが入りません。スウィングにこびりついた悪癖をなくし、ナチュラルで澱みないスウィングを磨き上げるのに、素振りは非常に有効な方法なのです。
そして、素振り棒はその上達に効果的な「素振り」という練習の効率を上げてくれる器具といえます。重い・長いなどの理由で手打ちを防いでくれたり、大きくしなることでシャフトをしならせる感覚を身につけることができたり、音が鳴ったりウェートが移動することで正しい動きになっているかを確認できたりと、効果は様々。
ですが、どれも素振りの効果をアップさせるという目的は一緒。それがゆえに、自分のスウィングの課題に適った素振り棒を選ぶことで、効率の良い上達が可能になるのです。
また、素振り棒は(竹ほうきやバットのように)通常のゴルフクラブより長かったり重かったりするケースが多く、そのようなものはラウンド前や練習をスタートする前のウォーミングアップにも適しています。
上達に役立ち、ウォーミングアップにも有用。一石二鳥の効果があることから、素振り棒はゴルファーの定番の練習器具として定着しているのです。
素振り棒の種類
また、それら素振り棒は、以下のような種類に分類可能です。
- スウィングを矯正系素振り棒
- ヘッドスピードアップ系素振り棒
- しなり系素振り棒
一つひとつを見ていきましょう。
スウィング矯正系素振り棒
ゴルファーが素振りを行う最大の理由、それはスウィングの矯正につきますが、それを効果的に行えるのがスウィング矯正系素振り棒です。
これらは、カウンターバランスになっていたり、シャフトが曲がっていたり、グリップエンドに特殊な部品がつけられていることでスウィングを理想の状態へと近づける器具。基本的に「振るだけ」で器具が勝手にいい動きへと導いてくれるのがうれしい点です。
素振り棒の元祖である竹ほうきも、ヘッドの効かせ方や遠心力を感じることに優れた道具でしたが、これらの練習器具はその現代版とも言える機能を持っているのです。
カット軌道を直したい、スウィング効率を高めて曲がりを減らして飛距離アップしたい。そう考えるゴルファーにおすすめなのが、このタイプの素振り棒です。以下、おすすめのスウィング矯正系素振り棒をご紹介します。
【スウィング矯正系素振り棒】スライスを防ぐ素振り棒「ライビースイング ベンド ミッド」
振るだけで球をつかまえる感覚を身につけられる素振り棒、それがライビースイング ベンド ミッド。途中で曲がったシャフトの両端にグリップがついた練習器具です。
黒とオレンジが装着されたグリップのうち、黒いグリップのほうを持ってスウィングすると、曲がったシャフトが自然に正しいスウィングの軌道を教えてくれる仕様となっています。シャフトが湾曲していることでヘッドが後ろに倒れるような動きが導かれ、インパクト前後ではフェースがターンする感覚を得ることが可能。これにより、球をつかまえる動作が身についていくのです。
また、オレンジ色のグリップを持てば器具自体を非常に軽く感じられるため、その状態で早く振ればヘッドスピードアップも可能です。

【スウィング矯正系素振り棒】音で導くバット型素振り棒「ベスコンスイングバット」
定番ともいえるバット型の素振り棒ですが、内部に小さなボールが入っており、それが移動することで起こる「カチッ」という音、そして先端の穴から鳴る「ヒュッ」という笛のような音、ふたつの音でスウィングの正しさを教えてくれるのが特徴の素振り棒です。
スウィング中、トップで「カチッ」、インパクトからフォローにかけて「カチッ」、フィニッシュでクラブが体の正面に戻ったときに「カチッ」と、3回「カチッ」という音がすればそれは正しいスウィングができている証拠。
また、ヘッド先端の穴から鳴るヒュッ! という風切り音が、インパクトからフォローにかけて大きな音で鳴らすことができるかポイント。550グラムと通常のクラブよりも重いベスコンスウィングバットをスピーディに振ることで、風切り音を大きくすることができ、それに伴って正しい動きが身についていきます。
長さが32インチ、36インチの二つから選べるのも嬉しいところ。スウィング改善に、ウォーミングアップに役立つ素振り棒です。
【スウィング矯正系素振り棒】ゴルフクラブと同じ重心特性の素振り棒「リバイバー&リバイバープラス」
「リバイバー」と「リバイバープラス」は素振り棒としては珍しく、ゴルフクラブと同じ重心特性=シャフトの軸戦とヘッドの重心が離れているタイプの素振り棒。
「リバイバー」は非常に軽量な練習器具で、ヘッドスピードアップに効果的。同時に、重心が実際のゴルフクラブに近く、さらに調整可能であるため、“振るだけ”の練習にならず、スウィングを磨き上げられるメリットがあります。

ヘッドが小さいほうが「リバイバー」、大きいほうが「リバイバープラス」
一方の「リバイバープラス」はゴルフクラブよりもググッと重い重量系の練習器具。重いものを振ることで可動域を広げたり筋力アップといった効果がありつつ、スウィングの安定性・再現性を高めることが可能です。
どちらか一方でもいいのですが、ふたつセットで使えばさらに効果的。そんな練習器具です。
【スウィング矯正系素振り棒】ドラコンの専門家が考えた! 飛距離アップ素振り棒「ダワ筋スティック」
YouTuberとしても人気の飛ばしの専門家、ダワ筋(だわきん)こと和田正義プロが考案したのがこの「ダワ筋スティック」。
グリップ付きの長くて重いシャフトの両端に大小ふたつのボールがついた練習器具で、飛ばしに必須な遠心力を感じることができ、体でクラブを操作する感覚が身について、結果的に飛距離アップが叶うという練習器具。正しい使い方さえすれば、1日10回素振りするだけで十分効果的なので、“タイパ”にも優れています。

アドレス(左)で体にくっついたボールがインパクト(右)で離れるのがポイント
カット軌道の矯正にも効果的で、筋力アップもできる。シンプルですが1本で非常に多くの効果が期待できる練習器具です。

ヘッドスピードアップ系素振り棒
素振り棒の練習効果として、ヘッドスピードアップは大きな要素のひとつ。そのヘッドスピードアップを実現するのが、ヘッドスピードアップ系の素振り棒です。
この系統の“基本”は通常のクラブよりも軽量である点。軽いものをマックスで振ると、通常のクラブを振ったときよりもはるかに速くスウィングすることが可能。
その感覚を保持した状態でいつものクラブをスウィングすると、脳が軽く・速く振った感覚を覚えているため、いつもよりヘッドスピードを上げることが可能になります。
これを繰り返すことでヘッドスピードのベースを引き上げる、飛距離アップに特化した素振り用練習器具が「ヘッドスピードアップ系素振り棒」です。以下に、その代表的なものをご紹介します。
【ヘッドスピードアップ系素振り棒】辻村明志プロコーチ考案! ヘッドスピードを伸ばす「辻村鍛錬棒」
多くの女子プロが師事するツアープロコーチの第一人者、辻村明志コーチ自らが考案し「最高の練習器具ができた」という自信作がこの「辻村鍛錬棒」。
グリップエンドに480グラムの鉛玉が装着された素振り用練習器具で、グリップエンドに重さがあるためカウンターバランスとなり、「楽にヘッドが走る感覚」を身につけることができるのが特徴です。
手元の重いカウンターバランス設計のため、テークバックすると自然に手首にコックが入ります。飛距離を伸ばすための自然なコッキングもマスターできるのです。スウィングを磨き、飛距離も伸ばすための素振り棒です。
【ヘッドスピードアップ系素振り棒】ヘッドスピードアップに効果大! 「レーヴ スイングスティック」
飛ばせるシャフト造りに定評のあるカスタムメーカー、レーヴが作った素振り棒、それが「レーヴ スイングスティック」です。
長さは45インチ。ヘッド重量200gと、ほぼドライバーと同じスペック。シャフトメーカーが作るものだけに、シャフトにしっかりとしなりを感じることができ、ドライバーと同じ振り心地でスウィングすることが可能です。
ドライバーと同じ感覚で素振りをすれば自然とスウィングアークが大きくなり、シャフトのしなりも感じられ、切り返しのタイミングも整う練習器具です。

【ヘッドスピードアップ系素振り棒】飛距離アップ特化素振り棒「ヘッドスピーダー」
「わずか6回連続で素振りをするだけで、愛用ドライバーのヘッドスピードが3〜5m/sも速くなる」が謳い文句の素振り棒、それが「ヘッドスピーダー」です。
長さは48インチで、重さは330グラムと通常のドライバーよりも長く・重い設計。グリップは矯正用グリップで、細くてしなるシャフト部分には「タイミングボール」と呼ばれるボールが付いています。
このボールをグリップ側にセットした状態で素振りをし、インパクトのポイントでボールをグリップからシャフト先端に移動させ、「ポン!」と音を鳴らせたらいいスウィングができている証拠、という練習器具です。
さらに、このタイミングボールをシャフト先端につけた状態で5回、6回と素振りをすると、普段のスウィングよりもはるかに速いスピードで振ることができます。
この状態を体感してからいつものクラブを振ることで、容易にヘッドスピードアップができる。そのような効果もある、ふたつの用途を持つ素振り棒でもあります。

しなり系素振り棒
ゴルフは道具を使うスポーツであり、遠くに正確に飛ばすためにはゴルフクラブを正しく取り扱うことが重要になります。そして、ゴルフクラブを正しく取り扱う上で非常に大事なのが、シャフトのしなりを感じるということ。
とはいえ、シャフトは体感的にはただの棒なので、そのしなりを感じるのは初級〜中級ゴルファーにはなかなか難しいもの。そのため、極端に柔らかい素材を使うことでシャフトのしなりを感じられる練習器具も多数あります。それが「しなり系練習器具」です。
通常のゴルフのシャフトよりもしなる素材が使用されているため、振れば誰でもしなりを感じることができ、繰り返し練習することで、通常のゴルフクラブのしなりも感じられるようになってきます。
ゴルフクラブは始動、切り返し、インパクト前後の3度大きくしなると言われます。スウィングにおいて極めて重要な3つのタイミングでのしなりを感じられるようになることが、スコアアップを狙う上で極めて重要であることは言うまでもありません。
【しなり系素振り棒】LPスイング スピードアップスティック
多くのツアープロを指導する吉田直樹コーチが監修した練習器具「LPスイング スピードアップスティック」は、長さ43インチのよくしなるシャフトの片側に片手で握る用のショートグリップ、もう片側に両手で握るノーマルグリップを装着した素振り棒。普通に素振りをするだけで、クラブのしなりを感じることが可能です。
よくしなるから自然にタメを感じることができ、基本的には振るだけでOKな器具です。
また、片手用グリップを左手一本で握ってスウィングするのもおすすめの使用法。このとき、フォローサイドで左わきが密着せずに体から離れていくのがコツで、これができていれば正しくクラブがリリースできているということ。クラブを速く振るために絶対に必要なダウンスウィングのタメを体感できるスティックです。

【しなり系素振り棒】しなりがわかる素振りバット「ウィップモンスターバット」
「しなり」を覚えられる素振り用バットが「ウィップモンスターバット」です。素振り用バットが多々あるなか、これはしなりを覚えることに特化した練習器具。
長さは41.5インチでドライバーより4インチほど短めで、重さはドライバー約2本分の600グラムと。それが、ウィップ=ムチのように大きくしなります。それにより、切り返し以降遅れてきたクラブヘッドがインパクト前後で一気に走っていく感覚≒シャフトをしならせる感覚が、振るだけで身につけられるのです。
しなりが覚えられる「やわらかい」素振り用バット。ありそうでなかったのが、このウィップモンスターバットです。

素振り棒で上達しよう!
このように、特徴の異なる練習器具をうまく練習に取り入れることで、効率良くスウィングを磨き上げることが可能になります。そして、素振りでスウィング作りをし、練習場でその効果をたしかめるというサイクルを繰り返すことで、上達スピードは圧倒的に早まることが期待できます。
練習場にはよく行ってるし、ボールも数多く打っているけど全然上達しない……そんな悩みを抱えている人は、「素振り棒」を普段の練習に取り入れてみてはいかがでしょうか。びっくりするくらいの成果が出るかもしれませんよ!