パターの「究極のシンプル」は作れるか!? 男たちの挑戦 【ZERO PUTTER#1】

ゴルフポケットから2022年4月12日発売の「MUQU ZERO PUTTER」。それは“究極のシンプル”を目指して、機械加工の匠、クラブデザイナー、プロゴルファーらがその能力と知恵を結集してつくった超精密機械加工削り出しパターだ。「ZERO」はいかにして生まれてきたのか、4週にわたってその制作背景をレポート。その第1回をお送りする。

究極のパターを求めて

「究極のパター」は存在するだろうか。

おそらく存在しない。パットに型なしという言葉がある通り、パッティングスタイルは人それぞれ。パターそのものにも、ゴルファーひとりひとりに合う・合わないが明確に存在する。ドライバーやアイアン、ウェッジといったほかの番手に比べ、パターのラインナップが桁違いに多いのがその証拠だ。形状、素材、長さ、ネック形状……パターのカタチは千差万別が当たり前だと言える。

パターの「究極のシンプル」をつくりたい。その過程を、4回に分けてレポートする

しかし、長い時間を通じて形を変えていないパターが存在するのも事実。1960年台にそのオリジナルが生み出されてから半世紀以上を経て、クランクネック、トウヒールバランス設計といったコンセプトを変えないまま、2022年の今もゴルフ界の最先端に君臨している、ブレードタイプのパターがそれだ。

ドライバーは言うまでもなく、アイアンだってこの60年間で大きく姿を変えている。ブレードタイプのパターだけが、時の審判を経て生き残り続けているのだ。

ならば、究極のパターは難しくても、究極のブレードパターを作ることはできるんじゃないか。クラブデザイナー・鈴木育生はそう考えた。

クラブデザイナー・鈴木育生。本企画の仕掛け人だ

「パターって、悩み始めるとキリがないですよね。自分の腕が悪いのか、パターが悪いのかすらわからなくなって、パターを取っ替え引っ替えするようになってしまう。作りたいのは、悩んだときに戻って来られるパター。エースパターであり、自分の基準となるようなパターです」(鈴木)

鈴木はこう語る。どんなパターにも、それぞれ特徴があり、クセがある。それらを極限までそぎ落としていった先に、きっと究極のシンプルはあるのではないか……。

名器×名器×名器×名器=?

では、どうすれば究極のシンプルにたどりつけるのだろうか。鈴木が応援を要請したのが、パター博士としてメディアに多数出演するプロゴルファー・早川佳智だ。鈴木のコンセプトに早川は賛同し、こう意見した。

パターを語らせたら右に出る者はいない男。プロゴルファー・早川佳智が全面的に監修した

「ブレードタイプのパターには、年代ごとにその時代を代表するモデルがあって、他のモデルはその派生系と言えます。絶対に抑えておかなくてはならない名器中の名器の数はそう多くはない。そして、それら名器中の名器と呼ばれるパターたちは、そもそも形状的には極めてシンプルなんです。それらを徹底的に分析していくことで『究極のシンプル』が見えてくるかもしれません」(早川)

歴史的名器を現代の3Dスキャン技術で解析。厳選に厳選を重ねた名器のスキャンデータをコンピュータ上で重ね、浮かび上がった輪郭線から平均をとり、ひとつのパターの輪郭を描き出していったら——現れるのはパターの「ゼロ」、すなわち“究極のシンプル”なのではないか──?

「MUQU」ブランドでゴルフ界にも参入する機械加工の匠集団・エムエス製作所の技術が、0.01ミリの精度を実現する

このコンセプトのもとに、プロフェッショナルが集結した。製造を担当するのは愛知県清須市のエムエス製作所。自動車産業で栄える愛知県下において、モノづくりの街として知られる清須市を本拠地に、最先端の機械加工を手がける会社で、鉄の塊からアイアンやウェッジを削り出してつくる「MUQU」シリーズでゴルフ業界にもすでに参入済。製造精度が極めて高い機械加工は“究極のシンプル”を目指す上で欠かせない。

0.01ミリの精度を実現する「フルミルド」

なぜ機械加工(フルミルド)なのか。エムエス製作所社長・迫田邦裕は言う。

エムエス製作所社長・迫田邦裕。現役の医師としても活躍する異色の経歴の持ち主

「たい焼きを10個買ったとして、同じカタチのものはふたつとないですよね。金型を使った工法では、どうしても精度的にバラつきが出てしまいます。鍛造・鋳造というのは、今も大切な工法ではありますが、フルミルドという次のステージへと工法は進んでいるのも事実です。鋳造からはじまり、鍛造、精密鋳造、精密鍛造と工法のステージが上がっているなか、フルミルドは現時点で最高の精度を誇る工法。なかでも、その最先端である五軸加工機が使えるのが、弊社の強みです」(迫田)

究極のシンプルを目指す過程において、求められるのは0.01ミリの精度だ。しかし、その0.01ミリはグラインダーでひと削りすれば消えてしまう誤差のような数字でもある。その精度はフルミルドでなければ実現できない。あらかじめプログラミングされた通りに機械が鉄を削り出すフルミルド工法では、0.01ミリたりとも誤差は生じない。比喩ではなく、それだけの精度があるのだ。

こうしてクラブデザイナーの鈴木育生、“パター博士プロ”・早川佳智、そして“鉄の匠”とも呼ぶべき機械加工のプロ中のプロたちが、パターに命と魂を吹き込んでいくことになった。

こうして男たちは集った。最新鋭の加工機を用い、パターを1本1本削り出していく。左からエムエス製作所の松本健嗣、同じく東幸秀、早川、迫田、鈴木。

合言葉は、究極のシンプル。
迷ったときに、帰ってこられるパター。
自分の技術の基本となるパター。
パターとはなにかを教えてくれるパター。
ずっと使い続けることができるパター。
究極の精度をもつ、唯一無二のパター。

つくりたいのは、そんなパターだ。流行り廃りに関係なく、10年後も、20年後も当然のようにエースとして使い続けられるパターがつくりたい。長く使う間、浮気することがあっても、調子を崩したときには必ず帰ってこられる港のようなパターがつくりたい。いいパターの条件とはなにか、それを教えてくれるようなパターがつくりたい。1本1本に個体差がない、究極の精度を持つパターをつくりたい──。

0.01ミリの妥協も許さない職人としての矜持と、最高のパターを作りたいという思いに腹の底から夢中になれる少年の純真さを持つオトナたちが集まったのは2021年7月のこと。「ZERO」パターへの道は、こうして第一歩が記されていったのだ。

<#2につづく>

ゴルフポケット独占・MUQU ZERO PUTTERの詳細はコチラ↓

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