ドライバーでナイスショットを放ち、グリーンまでは残り130ヤード。ここはアイアンで確実にグリーンをとらえたいところ……と意気込んで打ったら大ダフリ! これだとせっかくのナイスショットも無駄になってしまいますよね。
どうすればアイアンでダフらず確実にボールをヒットすることができるのか。また、そのためにはどのような練習を行うのが良いのか、詳しく見ていきましょう。
アイアンで「ダフる」とはなにか?
まず、アイアンがダフるとはどのような状態なのかを考えてみましょう。物理的には、ボールの手前の地面にアイアンのヘッドが当たっている状態のことを言います。
これは、やや難しい言葉でいうと、「クラブの最下点がボールの手前にある状態」だと言えます。
そのため、なぜアイアンがダフってしまうのかを考えるときには、なぜクラブの最下点がボールの手前に来てしまうのか、それを防ぐにはどうしたらいいのかを考える必要があるのです。
そして、その前にひとつ試しておくべきことがあります。
ダフらないために、まずはボール位置を調整しよう
ダフるとはクラブの最下点がボールの手前に来てしまっている状態です。ならば、クラブの最下点の手前にボールをセットすれば、原理的にはダフることはありません。
アイアンの場合、ボール位置は7番アイアンで体の正面が基準。6番、5番と長い番手になるほど体の中心より左にボール位置を少しずつズラし、8番、9番と短い番手になるほど体の中心より右にボール位置を少しずつズラしていくのが基本となります。

アドレス完成時に両足は肩幅程度まで開き、ヘッドが体の中心に、ボールはそのすぐ左側にあるイメージだ(撮影/姉崎正)
ボール位置がこの基準よりも左にズレていると、自ずと最下点がボールの手前にきやすくなってしまいますし、そもそも右肩がカブった(前に出た)構えになりやすいため、スウィング的にもアウトサイドインでいわゆる大根切りのような、ダフリが出やすいスウィングになりがちです。
ですので、アイアンのダフリに悩む際は、まずボール位置が適正かどうかを見定めるのが最初のステップになります。
コースでは「打つ前に素振りをし、クラブヘッドが芝をこすったその位置にボールをセットする」という古来伝わるダフリ防止法がありますが、それを実践するのも効果があるかもしれません。
アイアンは「打ち込む」からダフる
さて、ボール位置の確認がおわったら、続いては考え方を見直していきましょう。
アマチュアゴルファーがアイアンでダフってしまう大きな理由として考えられるのが「アイアンは打ち込むものだ」という思い込みです。
アイアンは上から下に打ち込む。アイアンはダウンブローに打つ。こんなふうに教わったゴルファーは非常に多いと思いますが、アイアンは基本的に地面に置いてあるボールを打つため、そもそもアッパーブローにとらえることが物理的にできません。
先述したように、アイアンでダフらずにボールをとらえるためには、クラブの最下点をボールより先にする必要があります。つまり、正しいインパクトを迎えれば、それはおのずとダウンブローになっているのです。
打ち込むという言葉には、「釘を打ち込む」といったように、非常に鋭角なイメージがあります。アイアンのスウィング軌道は実際は非常にゆるやかなものが理想となりますが、「打ち込む」という意識を持つと、それこそ釘を打ち込むような鋭角的なスウィングになりがち。
ダフるとは、リーディングエッジがクラブに突き刺さった状態である場合がほとんどですが、これは「打ち込む」意識が強いと起こりがち。
「打ち込む」「ダウンブローに打つ」といったイメージをなくすとともに、地面に最初にあたるのはリーディングエッジではなく、アイアンのソール(底面)であると意識することもダフリを防ぐためには重要です。
ダフリを防ぐ練習法
ボール位置を調整し、打ち込むイメージを排除して、すぐにナイスショットが連発できればいいのですが、なかなかそうはいきません。ですので、続いては効果的な練習を行なっていきましょう。おすすめのは、ティアップしたボールを打つ練習法です。
というのも、練習場は人工マットが敷いてあるため、ダフってもクラブがボールをそこそことらえてくれます。そのため、とくに初心者のうちは、自分がダフっていることに気が付くことができないケースが多くあります。
練習場ではそこそこ当たっているのにコースだと大ダフリ連発! という状態になってしまっている人は、実際は練習場でもダフっている可能性が高い。人工マット環境がそれに気づかせてくれないのです。
ティアップしたボールを打とうとした場合、クラブの最下点がボールの手前に来た場合、フェースの上目に当たったり、そもそもティだけを打ってしまう状態になるため、ボールはまともに当たりません。つまり、人工マット環境だと気づくのが難しいダフリが如実にわかってしまうのです。
また、急角度でボールを振り下ろしても、ティアップしたボールは上手く打てません。クラブヘッドが描くゆるやかな孤、その最下点の手前にボールがくるようにスウィングしたとき、はじめてナイスショットが可能になります。
ティアップしたボールを打つ練習は意外なほど難易度が高いです。ですので、はじめのうちは9番アイアンなどのショートアイアンを用いて、ハーフスウィングで練習すると良いでしょう。非常に地味な練習ではありますが、ダフリに対する効果は期待できます。
ダフリを防ぐには練習器具を使用するのもオススメ
アイアンでのダフリを防ぐためには、練習器具の力を借りるのも非常に有効な方法です。練習器具とは「そのようにしか振れない」状態をゴルファーに強いる器具。
ゴルフクラブ自体は300〜400グラム程度と軽く、片手でも振り回すことが可能です。そのため、どうしても手打ちになりやすく、間違った動きも容易にできてしまいます。
練習器具を用いることで、ダフリにつながるような良くない動きができなくなり、強制的に正しい動きをすることになります。それを繰り返すことで、練習器具がない状態でも正しい動きができるようになってくるのです。
本記事では、ダフリ防止にとくに効果の高い練習器具を3つご紹介します。
ダフリを防ぐ練習器具1:ダブルグリップアイアン
女子ツアーで大活躍する岩井明愛プロと岩井千怜プロの先生で、2024年のゴルフダイジェスト「レッスン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した岩井哲二コーチが考案した練習器具が、このダブルグリップアイアン。

胸の前の三角形を崩さずに振る感覚が自然とつかめるようになる
クラブを構えたとき、両肩と両腕は三角形をつくりますが、このダブルグリップアイアンはその三角形をキープしたまま振ることを強いるのがポイント。
三角形がキープされていればスウィングの再現性が高まり、スウィングの精度も高まります。クラブを手で操作してしまったり、打ち込んでしまったりといった、ダフリにつながる操作がやりにくくなるため、ダフらないスウィングを体に覚えこませるのに最適です。

ダフリを防ぐ練習器具2: ハンドファーストトレーナー
プロのアイアンのインパクトを見ると、ほぼ間違いなくクラブヘッドよりも手元が前に出たカタチでインパクトを迎えていることがわかります。

シャフトがカギ型に曲がったアイアンタイプの練習器具
これは、手を前に動かしているのではなく、逆に手元はまったく動かさずに体を回してインパクトを迎えている証拠。その状態を強制的に体験できるのが、この「ハンドファーストトレーナー」。
アイアンでダフらずにボールをとらえ、しっかりと飛距離と高さを出し、スピンをかけるために必要なハンドファーストインパクトが自ずと身についてしまう練習器具なので、アイアンがダフる、飛ばないという人にはとくにオススメです。

ダフリを防ぐ練習器具3: シャローイング・ハンドファースト掌屈リストベルト
上に挙げたハンドファーストなインパクトを実現するためには、左手首が手のひら側に曲がる「掌屈(しょうくつ)」と呼ばれる状態が求められます。

理想の「手首の状態」がキープできる
逆に、インパクトの手前で左手首の角度がほどけてしまった状態をアーリーリリースと言い、ダフリの大きな原因となります。「シャローイング・ハンドファースト掌屈リストベルト」は、そのような手首のほどけを防ぐ練習器具となっています。
手首の使いすぎはダフリにつながる悪癖。このような器具を使って、早めに矯正しておくのが中長期的な上達につながっていくのです。

ダフリを防いでパーオンを目指そう!
アイアンのダフリはストロークをほぼそのままひとつ失う手痛いミス。反対に、2打目のアイアンショットでグリーンをとらえることができれば、パーの確率は大きく高まりますし、バーディの可能性まで生じます。パーオンは無理でも、グリーン周りまでボールを運ぶことができればパーやボギーでスコアをまとめることが可能になります。
そしてなにより、アイアンの芯でボールをとらえる快感は、ドライバーのナイスショットとはまた違うゴルフの大きな喜びのひとつ。アイアンがバシバシ当たると、周囲から「アイツはショットメーカーだな」という嬉しい評価もされてくるはずです。
アイアンショットはゴルフの大きな魅力のひとつ。ダフリを防ぐコツはほぼイコール、アイアンでナイスショットを打つためのコツといっても過言ではありません。
ぜひここで解説したコツを実践し、アイアンのダフリを改善してくださいね!