大概のアイアンセットは、5〜7番からPW(ピッチングウェッジ)までの5本前後。必然的に、“その下”の番手は自分で買う必要が生じます。サンドウェッジはバンカーからの脱出に使うため、絶対に必要。そこで悩むのが「アプローチウェッジ」は必要か、否かです。
本記事では、ゴルフ初心者の方でもわかりやすいように、アプローチウェッジが必要か否かをゴルフメディア編集長経験のあるキャリア20年超の執筆者が、過去の取材などに基づいて解説していきます。ぜひ、ご自身のクラブセッティングの参考にしてみてくださいね!
そもそもアプローチウェッジとは?
アプローチウェッジとはどのようなクラブでしょうか? 一般にそれは、ロフト角が52度前後のウェッジのこと。以前はアプローチウェッジやサンドウェッジまでがアイアンとセットで販売されるのが一般的でしたが、最近ではアプローチウェッジやサンドウェッジは「単品」で買うのが一般的になってきました。
基本的にはピッチングウェッジとサンドウェッジの間の距離を打つクラブであり、グリーン周りでのアプローチで使用することも多い。それがアプローチウェッジです。
「A」「AW」「52°」アプローチウェッジのさまざまな表記
アプローチウェッジが必要か否かを考える前に、買うとしたらどのような方法があるかを知っておきましょう。
アプローチウェッジは単品で買うのが一般的と述べましたが、アマチュア向けのセットの中にはアプローチウェッジ、サンドウェッジがセットになっているものも珍しくありません。これらはアイアンと似たような形状をしており、飛距離のギャップも上手に埋まるように設計されています。総じて、アマチュアにやさしいアプローチウェッジが多いのが、アイアンセットの“セットウェッジ”の特徴。クラブの地面に当たる部分であるソールには「A」とか「AW」などと刻印がされているのがアプローチウェッジです。(かつては『PS』とも呼ばれていました)
一方セットではない“単品ウェッジ”の場合、アプローチウェッジは主にロフトの数字がソールに刻印されています。何度から何度がアプローチウェッジであるという定義は存在しませんが、だいたい48度〜54度くらいをアプローチウェッジと呼ぶことが多いです。
そして、アプローチウェッジといえばというロフトはズバリ、52度。アプローチウェッジ52度、サンドウェッジ58度(56度)というのが最近のウェッジセッティングの定番となっています。
アプローチウェッジの用途は「間の距離を埋めること」と「ピッチ&ラン」
アプローチウェッジ主な用途は、100ヤード以内のグリーンを狙うショットや、グリーン周りでのアプローチです。
たとえばPWのフルショットで100ヤード、サンドウェッジで60ヤード飛ぶ人であれば、アプローチウェッジで80ヤード飛ぶと間の距離が埋まり、力加減をコントロールしなくてもグリーンを狙えなくなるというメリットがあります。
また、ロフト52度前後のアプローチウェッジは、ピッチ&ランというアプローチのやり方がやりやすいという特徴もあります。ピッチ&ランとは、ざっくりといえば浮かせて転がすアプローチ。グリーン手前からグリーンまで浮かせて、そこから転がしてピンに寄せるようなアプローチを、52度は得意としているのです。ですので、アプローチはアプローチウェッジしか使わない! というゴルファーも多くいます。
アプローチにアプローチウェッジを採用するか否かに関わらず、中上級者は100ヤード以内のレンジからのスコアメークを最重要視することが多いため、アプローチウェッジは必須のクラブと言えます。そうでないとPWとSWの間の距離をすべてPWを加減して打ち分けることになり、それは中上級者にとっても難易度が上がってくるからです。
一方で、初心者ゴルファーにとっては、セットのウェッジを購入してサンドウェッジを買い、さらにアプローチウェッジも必要となると金銭的な負担も増えますし、「なくていいならなしでいきたい」という方も多くいるかと思います。ですので、ここからはその点に絞って考えていきたいと思います。
初心者ゴルファーにアプローチウェッジは必要か
アプローチウェッジは、もちろんあって困るものではありません。金銭的に余裕があるのであれば、先々を見据えて買っておくのはもちろんありです。
ただ、ゴルフクラブは自分自身で必要性を感じてから購入するのでも遅くはないのも事実です。現時点で必要性を十分に認識できていないのであれば、購入は先送りにしても問題ありません。(これは他のクラブにも言えます)
アプローチウェッジは「アプローチ」と名前がついているため、アプローチ専用のクラブ、それがないとアプローチに問題が生じるクラブであるというふうに誤解されることがままありますが、実際のところそんなことはありません。
実は、アプローチウェッジでのアプローチは実はそこまで難易度が低くありません。アプローチはロフトが寝ていれば寝ているほど難しくなる(ボールの下をくぐるダルマ落としや、トップ、ザックリなどのミスが出やすくなる)からです。
初心者の方が安定してミスなくアプローチをしようと思うなら、ピッチングウェッジや9番アイアンなどのロフトの立ったクラブを使い、転がすアプローチを使ったほうがスコアは良くなるはずです。ですので、アプローチ用クラブとしてアプローチウェッジは「ひとまずなくてもOK」と言えます。
ショット用クラブとして考えた場合はどうでしょうか。PWとSWそれぞれのロフトにもよりますが、このふたつのクラブの間には絶対的に飛距離の差が生じます。そこをアプローチウェッジで埋めるのは、たしかに便利です。
ただ、初心者ゴルファーに限っては、そもそもクラブごとの距離を正確に打つことが難しいということもあり、多くのクラブを使うより、本数を絞ってクラブごとの習熟度を高めるほうがスコアメークにつながる可能性もあります。
ゴルフは肉体と同時に頭脳をフル稼働させるゲーム。ピッチングウェッジ、アプローチウェッジ、サンドウェッジをいちいちどれを使うか選ぶのではなく、たとえば100ヤード以内ならピッチングウェッジ一択! と決めてしまったほうが脳の疲労を抑え、メンタル的にも安定した状態でショットに臨める。そういう考えもあり得ます。
ですので、当初はアプローチウェッジは購入せず、アプローチのバリエーションを増やしたい、ピッチングウェッジとサンドウェッジの間の距離を埋めたいと思ったときに購入するのでも、決して遅くはないのです。
本当の初心者の方の場合、極端なことをいえば7番アイアン1本で回ったほうがスコアが安定するなんてケースがままありますし、なかにはあえて本数を減らしてプレーするベテランゴルファーもいます。クラブの本数を増やせばイコールスコアが減るというわけではないところも、ゴルフの奥深さのひとつです。
アプローチウェッジは「いつ」必要になるのか?
では、アプローチウェッジは「いつ」必要になってくるのでしょうか。ショットにおいては15〜20ヤード単位での距離の打ち分けをしたくなったときだと言えるでしょう。
初心者ゴルファーに、100ヤードと80ヤードを打ち分けろと言っても基本的にそれは無理な相談というもの。しかし、ゴルフにハマってラウンドを重ねたり、練習場に通ったりしてショットが安定してくると、100ヤードと60ヤードの間の80ヤードをフルショットで埋めたくなってくるものです。
また、110切りを目指したいレベルになってくると、アプローチの球筋もいくつか使い分けたくなるもの。サンドウェッジだけ、ピッチングウェッジだけだと限界を感じるようになると、アプローチウェッジを使った浮かせて転がすピッチ&ランの魅力にも気がついてきます。
そして、100切り、さらには90切りを目指すレベルとなると、アプローチウェッジは必須級のクラブとなってきます。スコアの壁を乗り越えるスピードは人それぞれですが、100切りを達成する前のどこかの時点で、「アプローチウェッジ、必要だな」と思う瞬間が来るでしょう。その時がアプローチウェッジの買いどき・入れどきです。
アプローチウェッジを買うなら「セット」か「単品」か
では、アプローチウェッジを買おうと思ったら、セットのアプローチウェッジと単品ウェッジ、どちらが良いでしょうか。実は、両者にはそれぞれメリット・デメリットがあります。まずはセットウェッジからみていきましょう。
セットウェッジ
【メリット】 アイアンと同じ感覚で打てる/やさしいモデルが多く、ミスに強い/飛距離の階段が作りやすい
【デメリット】 ロフトが自由に選べない/コントロールショットがやりにくい/そもそもセットウェッジがない場合も
セットウェッジはアイアンからの「流れ」で似たような形状でできているため、使っているアイアンと同じ感覚で打てるのが大きなメリットです。また、セットウェッジが存在するアイアンはそもそもアマチュア向けのやさしいモデルであることがほとんど。そのため、ソールが広かったり、重心が低く・深くてミスヒットに強く上がりやすかったりと、アマチュアにうれしい機能が搭載されているものが多いです。
また、ピッチングウェッジからのロフト差も考慮に入れられているため、普通に打てば飛距離の打ち分けが自然とできてしまうのもメリット。
一方、ロフトやモデルを自分で自由に選べないのはデメリットですし、やさしいモデルであるということはコントロールショットがやりにくいということでもあり、それらはデメリットとなります。中上級者向けのモデルになってくると、そもそもセットウェッジの設定がないというケースもあります。
単品ウェッジ
【メリット】 モデルもロフトも自由に選べる/コントロールショットがしやすい/スピンが入りやすい
【デメリット】
思ったより「飛ばない」ことがある
では一方の単品ウェッジはどうでしょうか。単品ウェッジならば、48度でも、50度でも、52度でも、好きなロフトを選ぶことができますから、自分のセッティングに合わせて好みのモデルの好みのロフトを使うことが可能になります。
また、やや高度な話になりますが、単品ウェッジはセットウェッジに比べて重心が高い場合が多く、その分コントロールショットがしやすかったり、スピンを効かせやすいなどのメリットもあります。
中上級者の奥が単品ウェッジを使うのは、このようなコントロール性能やスピン性能があるからです。
一方のデメリットですが、重心が高くスピンがかかりやすいということは、「飛ばし」とは基本的に真逆の要素となるため、セットのピッチングとの間に飛距離差が出やすいという懸念はあります。
とくにセットのピッチングウェッジのロフトが40度前後など、極端に立ったモデルの場合、アプローチウェッジで52度を選ぶとロフト間隔が空きすぎてしまいます。その場合、ピッチングウェッジとアプローチウェッジの間にもう1本クラブが必要となるケースがあることも頭に入れておきましょう。
アプローチウェッジが「必要!」と思えるとゴルフは楽しい
結論をまとめれば、アプローチウェッジは初心者のころはなくても問題なし。しかし、上達していくとやがては自然と必要に思えてくる、ということです。
アプローチウェッジが必要と思うということは、スコアで言えば120を切り、110、そして100切りへと突き進むころでしょうか。よく「ゴルフが一番面白い時期」などとも言われる時期で、クラブへの関心も高まってくるタイミングでもあります。
つまり、アプローチウェッジが欲しいと思えるレベルに達すると、ゴルフは面白い! ということ。ぜひ、そのレベルに達するまで、楽しくゴルフを続けてくださいね!
アプローチに悩んだら「専用クラブ」を使う手も
アプローチをミスなく行うという意味では、専用クラブを採用するのもいい方法。たとえば月刊ゴルフダイジェストに掲載されたのをきっかけにスマッシュヒットとなった「サブロクウェッジ」はそのうちのひとつです。
ロフト36度と8番アイアン相当のロフトで、長さはパターなみの34.5インチと、「これでもか」とミスを減らす要素を詰め込んだランニングアプローチ専用クラブで、グリーン周りはこれ1本あればほとんどの状況から寄せていくことが可能です。
アプローチに特化したクラブを1本追加するというのも、セッティングを考える上では有効な方法です。
